特集!女の離婚

離婚弁護士野口真寿実

離婚を後悔しない!将来をしっかり見据えた離婚を

女性が離婚をするうえで、一番考えなければならないのが今後の生活設計です。

生活保護を受けていない母子家庭の約8割が生活保護レベル以下で生活をしているという話もあります。

先々のことを考えず、その場の感情にまかせ、勢いで離婚してしまうのは危険です。

離婚後の生活をいかに安定させるか、「離婚してよかった」と思えるためにはどうしたらいいか、離婚部門主任弁護士 野口 真寿実が詳しく解説していきます。

『婚姻費用』離婚前の別居期間中に忘れてはならないこと

「婚姻費用」とは、夫婦が別居中の生活費のことをいいます。別居中の夫婦で、妻が子供を引き取っている場合、通常は、夫は妻に対して婚姻費用を支払う義務があります。

離婚後の生活を考えるのであれば、「条件に納得できなければ離婚届に判を押さない!」が基本になります。

別居をして、当面の生活費さえ事欠く状況になってしまうと、目の前のお金(慰謝料や養育費)ほしさに不利な合意をしたくなってしまうかもしれません。しかしそれでは近い将来生活が行き詰まってしまうことは、目に見えています。

そこで大切になってくるのが、たとえ離婚への道のりが長期化したとしても、それに耐えうる生活費の確保です。

別居をはじめたらまず婚姻費用の請求!

  1. 夫に婚姻費用を請求する

    裁判所が作成した 「婚姻費用の算定表」を参考に、夫にどのくらいの金額を請求できるか?を確認し、婚姻費用を請求します。
    http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html(※裁判所HPが開きます)

  2. 支払いに応じなければすぐに裁判所に手続を

    婚姻費用の請求に対して、夫がガンとして支払いを拒否し続けた場合は、早急に裁判所に調停や審判を申立てたほうがよいでしょう。なぜなら、過去の分(支払う支払わないで争っていた期間)の婚姻費用を請求できるのは”調停や審判を申し立てたときから”になることが多いからです(つまり、夫婦間で 「支払って!」「いや支払わん!」と言い争っている期間の婚姻費用は、支払いが認められないことがあるからです。)。さらに、相手がなかなか支払いを認めず交渉が長期化してしまう場合は、「審判前の保全処分(※)」を含めて検討する必要があります。

    ※ 審判前の保全処分
    審判が成立するまでには時間がかかるので、それまでの暫定的な措置(婚姻費用の仮払い等)を裁判所に決めてもらうもの
    ここまで考えなくてはならないケースでは、弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  3. 相手が自営業者の場合・相手の収入が少ない場合の婚姻費用請求

    相手が自営業者の場合・相手の収入が少ない場合の婚姻費用請求
    夫が自営業者で、給料の差押えが難しい場合や、夫の収入が少なく(または無職で)婚姻費用が支払われたとしても、それでは少なすぎて生活できない場合は、役所に相談して、生活保護を受けられるかどうかも平行して検討する必要があります。

  4. 離婚後の生活は成り立つのか?しっかり検討

    婚姻費用を算定して、あるいは支払われる婚姻費用でしばらく別居生活を続けてみて、「これではお金が足りなくて生活できない!」と思った場合には要注意です。婚姻費用はあくまでも”別居中”の生活費。夫から支払われる金額は、離婚後さらに減ってしまうことになりますので、今後の生活設計をしっかり考える必要があります。

『養育費・財産分与』生活の糧を確保する!離婚に際して請求できるお金

  1. 財産分与

    今後の生活の糧になるようなお金が期待できるとすれば財産分与です。結婚中に夫婦で協力して形成した財産は、夫の名義であっても、 清算を求めることができます。近年は、専業主婦であっても、財産分与は夫婦で半分ずつのことが通常です。半分を要求していきましょう。相手が財産を隠していて、財産の全体をなかなか明らかにしない場合もよくあります。そのような場合は、通帳の記載などを手がかりに財産開示を要求することになります。裁判手続になると、調査嘱託を利用して銀行等に直接、財産状況の開示を求めることができます(開示請求には、銀行名と店名の特定が必要です。)。交渉や調停などで、財産を「出す」「出さない」とずるずるしている場合は訴訟手続も含めて検討した方が、かえって解決が早い場合もあります。

  2. 養育費

    妻が子供を引き取った場合、夫に養育費の支払いを請求できます。毎月の継続給付としては期待したくなります。ただ、裁判所が作成した養育費算定表によれば、相手の年収が500万円で、14歳以下の子供が2人の場合の養育費は月額8万円~10万円(2人合計で)程度にすぎません。これだけではとても生活できません。そこで、足りない分をどうするか?実家の援助はどの程度期待できるのか?働きに出ることはできるのか?その場合はどの程度の収入が期待できるか?急な支出に耐えられるような家計状況か?等しっかり検討する必要があります。

    養育費算定表
    http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html(※裁判所HPが開きます)

『慰謝料』離婚の原因をつくった相手に対して請求できるお金

離婚するとなると、女性側は理由を問わず慰謝料を受け取れると思っている方もいるかもしれませんが、それは間違いです。離婚の理由が”性格の不一致”である等、お互いに非がない場合は、相手に慰謝料を支払わせることは出来ません。

慰謝料について裁判で争った場合、浮気など、夫に違法な点があったとしても、慰謝料額は200万円から300万円程度です。大金といえば大金ですが、今後の長い生活を考えるとたいした金額とはいえません。慰謝料をあてにして、今後の生活設計を考えるのは難しいといえるでしょう。

夫側に原因があって(夫が浮気をした、夫が暴力をふるった等)夫から別れたいと言われている場合、”離婚すること”を条件にすれば、ある程度高額な慰謝料を請求することができます。こちら側は「今後の生活設計のめどが立つ程度の金額を支払うのであれば離婚してやってもよい」という交渉が成り立つのです。

ただし、交渉には、相手の収入や資力、離婚へ意欲等の要素がからんできますので、あまり頑張りすぎて金額を引き上げようとするとタイミングを逃してしまうこともあります。その点には要注意です。

「自分の場合はどうなんだろう?」とお悩みの方は、一度ご相談にいらしてみてください。

『親権』子供が大切・・・親権は渡さない!

母親が現実に子供を養育している場合、親権については母親はかなり有利です。親権を確たるものとするためには、子供を問題なく養育しているという実績を重ねることが大切です。間違っても虐待を疑われるようなことはしてはいけません。夫側から「妻には収入がないから親権者にふさわしくないのではないか」という主張が出ることがありますが、その点は気にする必要はありません。基本的には”より稼げる方が働いて養育費を支払い、稼ぎが少ない方が子供を監護養育するのが合理的”ともいえるからです。

『離婚回避』どうしても離婚したくない!どうしたらいい?

「自分は離婚したくないが、夫から離婚を求められた。夫は家を出て行ってしまって戻ってこない・・・。別れないためにはどうしたらいいですか?!」こういった場合、残念ながら、弁護士としては、離婚による解決方法の話をすることが多くなります。そうなってしまうのには、以下のような事情があるのです。

裁判では、夫が浮気した、暴力をふるった等、明らかに夫に原因がある場合(夫が有責配偶者である場合)や、夫婦生活が破綻しているとは言い切れない場合は、相手からの離婚請求は棄却になる可能性があります。

しかし、裁判で離婚請求が棄却になったからといって、夫が戻ってきてくれるわけではありません。法的には、夫婦には同居義務がありますが、この義務は、裁判所の力で強制することはできないので、出て行ってしまった夫を強制的に連れ戻すことはできないのです。

さらに、一度離婚訴訟で勝ったとしても、相手から再度離婚を求める訴訟を起こされるおそれもあります(裁判では同じ趣旨の訴えを起こすことはできません。しかし相手が、前回訴えを起こした時とは別の事情(”前回より別居期間が長くなった”とか、”前回より夫婦関係がさらに破綻した”とか)で、再度離婚訴訟を起こす可能性があるのです。)。

このような事情で、弁護士としては、離婚による解決方法の話をすることが多くなるのです。離婚は避けられないかわりに、といっては語弊があるかもしれませんが、このような場合は高額の慰謝料を請求できることがあります。つまり「別れたいなら今後の生活をしっかり保証してくれ!」という交渉ができるようになります。そうすると、今後の生活設計を考えやすくなるでしょう。

『離婚原因』とにかく離婚したい!理由が必要?

「特に夫に原因があるわけではない。でも離婚したい!こんな理由で離婚できるんでしょうか?」という相談は少なくありません。

裁判では法的離婚事由がなければ離婚はできないとされていますが、実際には、法的に離婚原因があるとはいえなくても離婚になってしまうことが通常ですので、離婚したいと思った場合には、離婚原因はそれほど気にしなくてもいいかもしれません。離婚したい理由が「性格の不一致」など、漠然としていて、自分にも相手にも明確な原因となるものがなかったとしても、離婚に向けての交渉を始めて特に問題はありません。

ただ、相手のことがいやになってしまったからといって、ある日突然家を飛び出してしまうようなことは避けましょう。そんなことをしてしまうと「離婚原因を作った」とされて、離婚自体が認められないおそれが出てきます。別居を始めるにしても、よく話し合って、双方が合意をしたうえで別居をするほうがよいでしょう。

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